第16話「港町にて(その3)」
ガフェインがB島から戻ってきて数日後の午後。
『おおガフェインか、調子はどうだ』
「まあボチボチってところだな。夏の雪山登山は楽しかったぜ」
B島からA島へ戻ってきたガフェインは自分の機体の前任の整備士であり、セリーナの師匠でもあるベルッケに電話をかけていた。
『お前の大冒険はセリーナからもよく聞いとるよ。ずいぶん整備し甲斐のありそうな所を飛んでいるじゃないか』
「俺もそうだが各地から色々な機体が集まってボロボロになるから、確かに整備士にとってはこの上なく腕を揮える絶好の場所だろうな」
『それで?こんな事を言うために電話したわけじゃあるまい。何かあったのか?』
「ああ、セリーナのことだ」
ガフェインは先日起こった事と、それからセリーナの元気がなんとなく無くなっていることを話した。
『ふむ、確かにセリーナも装備の不具合について触れていたな。自分のせいかもしれないと言っておった』
「不具合の起きた現物は数千メートルの山の上だから調べようが無いが、残っていた予備パーツを調べたらハードポイントとブーストの間の点火装置の機密性に問題があるらしい」
『つまりブーストに欠陥があったということか』
「ああ、点火装置に隙間から入った雪が詰まったのが原因、というのが結論だそうだ。
あの点火装置は設計が古いから新しい物に比べて装備に必要な改造が少ない、ってセリーナが考えて選んだんだが、この欠陥は見抜けなかったみたいだ」
『なるほど、まあワシも昔は良かれと思って付けたものに欠陥があったことは何度もあったがな。その度にフェルグスにしばかれてたが。ところでまだセリーナは元気がない状態なのか?』
「ああ。あいつは結構そういうこと引きずるタイプだからな」
『なるほど、よし!ワシもそっちに向かおう』
「は?いきなり何を言い出す!」
『ところで今お前の近くにセリーナはいるか?』
「いや、こっちで出来た仲間の奥さんと外で話してる。呼んでくるか?」
『いないならそれでいい。あいつがお前の所に来るまでの経緯から話そうと思っていたからな』
ベルッケは咳払いをして再び話し始めた。
『セリーナがワシに弟子入りを頼み込んできたのは五ヶ月くらい前だ。最初はワシの所なんかより他にいい所があると断ったんだが、あいつも頑なでな、お前と幼馴染だと知るまでは何故そこまでワシにこだわるのか理解できなかった』
「え?それって・・・・」
『お目付け役だの面倒くさい理由をつけてここに来てはいるが、あいつが整備士としてここに来た理由はお前だと思うぞ、ガフェイン』
『それで一週間の間毎日頼み込みに来るもんだからこっちも折れざるを得なくてな、そこまで真剣ならどこまで出来るか見てやろうと思ったわけだ。だが昔三回ほど弟子をとったことがあったが、ワシのやり方にはついて行けないと皆一週間したら来なくなった。だから最初はあまり期待してなかった』
前から気難しい性格とは思っていたが、弟子も逃げ出すほどとは・・・・。
『どうせいなくなるなら早い方がいいと思って、あえて前に弟子をとった時より厳しくした上に雑用ばかり任せていたんだが、これが弱音一つ吐かない程の根気があるし要領もいい。それで気まぐれに整備を手伝わせてみりゃワシより手先が器用でな』
「まあ、セリーナの実家は昔から代々続いてる時計屋だし、兄弟の中で一番手先が器用だからな。それに趣味で時計作るような奴だし。そんでもってセリーナの家では”一番手先が器用な男が家を継ぐ”ってしきたりがあってな、セリーナの親父が「男に生まれてれば・・・・」なんて度々ぼやいているのを聞いたことがある。セリーナの手の器用さは多分誰にも負けないんじゃないか?」
『弟子にあれだけ見せ付けられたらかえって自分が恥ずかしくなったわい。「こんな大器にワシは何をつまらん用事ばかり押し付けているんだ」ってな。それに気づいてからはワシの持っている技術をどんどん叩き込んでいったよ。弟子にとってから大体一ヶ月くらい経った頃だな。あの雑用は殆ど嫌がらせみたいな内容だった筈だが良く耐えたな・・・・』
過去の経験から若者不信になったとはいえ19歳の女の子によくもまあそんな酷い事を・・・・。
『一旦教え始めるとその要領の良さからめきめきと腕を上げてな、そっちに出発する前には技術だけなら一人前と言ってもいいくらいにまで成長した。・・・・今だから言うがこの前のお前の機体のオーバーホールは全部セリーナに任せたんだ。ワシはチェックしただけ』
「ちょ、おいおい、あれ全部セリーナに任せたのか!?っていうか何で黙ってた!」
『そんな事言ったらお前が整備を信用せんだろ。あと微妙に機体の動きが良くなってなかったか?あれもセリーナの独断で手を加えた物だ。ふふっ、中々にいいセンスをしている』
「あれ今まで爺さんがやった物だと思ってたんだが・・・・」
『あの機に乗って以来ずっとワシの整備を受けてきたお前にそこまで言わせるとはさすがワシの見込んだ弟子だ!』
「それで、爺さんが一人でこっちに送り込むってことはあの短期間で一人前に育てたって事なんだろ?簡単にできる事じゃ・・・・」
『いや、違う。そもそも誰に教えられたとしてもこんな短期間で一人前になる筈が無いだろう。整備士としてはまだまだ半人前よ』
「じゃあ、どうしてこんなことを」
『セリーナがそれを強く望んだからだ。ワシは仕事が立て込んでて同行できなかったから連れては行けなかったんだが、弟子入りを頼み込んできた時以上に真剣でな。その理由を聞いた時初めてお前の幼馴染だということを知ったよ。仕方ないから定期的に連絡を入れる条件付で送り出した。誰かの命を預かることできっと自身に足りないものを学び取って本当の一人前になってくれるとも考えたから送り出したんだが・・・・その様子ではまだ足りないものが見つからないようなんでな。ワシもそっちに向かう事にしたんだ』
「足りないもの?何だそれ」
『見せたり聞かせたりして伝える物ではない。ワシがそっちに行くまでにお前も探しておけ。というか、答え合わせの前に死ぬなよ?』
「少なくともあれに乗ってる間は空では死なない、そうなんだろ?」
『そうだ。・・・・まさか照準器を外してはいないだろうな?』
「外してねぇよ、”お守り”なんだろ?セリーナにもそこら辺は徹底させてる。外したらお守りの効果云々より爺さんに祟られて死にそうだ。だが、明らかにBf-109純正のものじゃないし、同じ形の照準器を探したが全く見つからなかったんだが。あれは一体何なんだ。」
『持っていく所に持って行けば博物館行き確定の幻のお宝だよ。あれを付けるために当時のワシはコックピットの中をちょっと作り変えたりもしたんだ。名前は・・・・貰った相手の国の言葉での名前だからな・・・・よんしき・・・・この字は何て読むんだったっけな・・・・』
ベルッケが名前を読み上げている最中、突然辺りがグラグラと揺れ始める。大して揺れは大きくないが、まずい。
「爺さん、急用が出来た!切るぞ!」
ガフェインは受話器を電話機に叩きつけるように置くと、外へと駆け出していった。
数分前、港町の酒場。
「一度や二度の失敗でクヨクヨしなーい!」
「・・・・・・はい」
セリーナはジムの妻、エレナに連れられて酒場に居た。
「大体、肝心のガフェイン君はちゃんと生きて帰ってきてるじゃない。それにウチの石頭亭主も助けてもらったし」
「でも、私のせいでガフェインが・・・・」
「私なんて何回ジムの顔面に酒ビン当てたか覚えてないって。あれだってそもそもあいつがあんなタイミングで入ってくるから悪いのよ」
「酔っ払った連中がまとわりついてきた時に」
エレナが隣のテーブルにおいてあった酒ビンを掴んで振り上げる。
「こんな風に酒ビンで頭を叩き割ろうと振り下ろしたらすっぽ抜けて飛んで行っちゃって」
じょぼぼぼぼぼぼ。
「わああ!エレナさん、それ、中身入ってる!入ってる!!」
「あ、本当だ、いけね。また掃除しないと」
エレナはすぐに雑巾を持ってきてこぼした酒を拭き始める。ちなみに驚いた拍子にビンも落としたのでその破片も散らばってしまった。
「ま、あたしみたいにドジばっかりな女でも人並みの幸せはつかめるんだから、あたしよりしっかりしてるセリーナちゃんなら大丈夫だって!」
よく見ると履いている左右の靴下も違う。
「え、ええ・・・・」
今の出来事をセリーナは悩むことも忘れてあっけにとられて見ることしか出来なかった。
「終わった!さて、続き続き」
掃除を終えたエレナが戻ってきた。
「それで?ガフェイン君とはどこまでいったの?」
「え?」
「とぼけな〜い、とぼけな〜い。ガフェイン君を追いかけてここまで来たんだからそういう色気のある関係があるんじゃないの〜?」
それを聞いた途端、セリーナの顔が真っ赤になる。
「い、いえ、私とガフェインはそんなんじゃ・・・・」
「そんな何でもないような関係ならそもそも一度や二度の失敗でこんなに落ち込んだりしないんじゃない?」
「うぅ・・・・そうかもしれません。・・・・最近、ガフェインが空に上がるたびに『もし帰ってこなかったら』って考えちゃって怖くなってくるんです」
「あのねぇ、待つ人間は誰でも同じような事を考えるよ。私は私のやるべきことをしてあんまり考えないようにしてるだけ。セリーナちゃんはその点、ガフェイン君の乗る飛行機を整備するんだから、ガフェイン君が帰ってこれるように頑張るしかないでしょ。後ろ向きな気持ちでガフェイン君の飛行機をいじっちゃ駄目。・・・・でも、もしジムが死んじゃったら・・・・・・・やっぱりわからない。泣くかもしれないし、そうじゃないかもしれない。そもそも考えても仕方のない事だしね」
「そう・・・ですよね」
「というか、やっぱりセリーナちゃんはガフェイン君のこと好きなんだぁ〜。それなら積極的にアプローチかけちゃえばいいのに。お酒に酔わないからちょっと難しいけど、強引にこっちのペースに乗っけちゃえば気があろうが無かろうがイチコロだって。お互いフリーだしセリーナちゃん可愛いし」
「・・・・私、小さい頃はガフェインしか友達って言える人が居なかったんです。だからずっとガフェインに勝手についていって迷惑ばかりかけてきて・・・・。私の勝手でガフェインと一緒になったってまた迷惑をかけるだけで・・・・。だから私・・・・・」
セリーナが何かを言いかけた時、突然辺りがグラグラと揺れ始めた。一瞬酒場が騒然とするが、大した揺れではなく揺れはすぐ治まった。セリーナの方へ視線を戻したエレナはセリーナがうずくまっているのに気づいた。
「・・・・・・・ッ!」
「どうしたの?揺れた時どこかぶつけちゃった?」
そう言ってセリーナの顔を覗き込むと、セリーナは唇まで真っ青になって震えていた。
「ちょっと、どうしちゃったの?セリーナちゃん!」
そこへ宿から走ってきたガフェインがセリーナへ駆け寄る。
「セリーナ!」
ガフェインはセリーナを立ち上がらせるとそのまま酒場を出て行った。エレナが追いかけたが、後で事情を説明すると言いそのまま宿へと向かった。
一時間の後、ガフェインは宿からでて酒場のエレナの元へ戻ってきた。隣にはジムの姿もあった。
「話は聞いた。一体どうしてこんなことに」
「セリーナちゃんは大丈夫?」
「あの後落ち着かせて、今寝かせた所です。セリーナは地震が苦手なので、僅かな揺れでもああなってしまうんです」
「それにしても顔が真っ青になる程っていうのはちょっと行き過ぎているだろ。過去に何かあったのか?」
「ええ、子供の頃に一度だけ。俺達の故郷はそんなに地震が多いところではないんですが、一度大きな地震に襲われた事があったんです」
「その時にトラウマになっちゃったのね」
「大怪我でもしたのか?」
「はい、俺が。その時セリーナは近くにいましたが無事でした」
「お前が怪我してどうしてセリーナちゃんがあんなことに?」
「多分、大怪我した俺を間近で見ていたからだと思います。俺はセリーナを家まで送る途中で気を失ったので全て知っているわけではありませんが、頭から結構血を流していたそうなので」
「そうか・・・・」
「子供の頃のセリーナは外で遊ぶ時はずっと俺についてきたんです。俺は自分のわがままを強いてもついてくるセリーナに対して得意になって、好奇心から何度も危ない場所へ連れ歩いて、あの時も危ない場所で遊んでたんです。だから俺が大怪我した事は自業自得なんでしょうが、セリーナにあんな思いをさせてしまったのも間違いなく俺の責任なんです」
「・・・・・・・」
三人はしばらくの間黙り込んでしまう。これ以上話す事はないと判断したガフェインは席を立って宿へ戻ることにした。
宿の部屋に戻るとセリーナはテーブルに向かって黙々と何かをしていた。部屋の入り口からでは何をしているかはよくわからない。
「よう、もういいのか?」
「ふあっ!」
何気なく話しかけたつもりだったが自分以外の存在に気づいたセリーナは慌ててテーブルの上に広げていた物をカバンにしまいこんだ。
「・・・・何やってたんだ?」
「な、なな何でもない。ちょ、ちょっと今日の晩御飯に何を作るか考えてただけ」
見た感じ料理本を広げていたようには見えなかったが、気にするほどの事でもないだろう。
「そっか、まあ今日は無理せず休んでもいいんだぜ。いざとなったら俺が作ればいいんだし」
「ううん大丈夫、ごめんね、また迷惑かけちゃって」
「気にするな。それにしても久しぶりだったな、地震もお前の反応も」
「う、うん」
「前にあったのはいつだったっけ・・・・、まだハイスクールに居た頃、大体三年前か」
「うん・・・・あ!ガフェイン、お願いだからそれ以上思い出さないで!」
「一限目が始まる直前に結構大きめの地震が来たよな」
「ガフェイン!やめてよ!」
「その時お前みんながいる中でもら・・・・ム、殺気!」
ガフェインがその場から飛び退くと顔を真っ赤にしたセリーナの一撃が縦に空を裂いた。いつの間に出したのか手には逆手に持ったマイナスドライバー。セリーナはそのまま、飛び退いた拍子に転んでしまったガフェインの上に馬乗りになる。
「ちょ、待っ、そんなんで脳天刺されたら死んじゃうって!」
「あの話は絶対忘れてって言ったでしょ!!」
「だーわかったわかった、忘れる、全部忘れるって」
「本当に?」
「信じろって、あの後騒ぎになる前に放心状態のお前をダッシュで保健室に連れて行った事も、なかなか乾かなくって戻ってきたのが結局三限目開始直前だった事も、何故か片付けが俺一人に押し付けられた事も、野次馬の中に息荒くしてる変態が三人くらいいた事も全部忘れ・・・・」
あれ?セリーナがマイナスドライバーを振り上げている。
「やっぱり死ね!」
「もうだめだー!」
その時、部屋のドアが勢い良く開く。突然の出来事にセリーナもガフェインもそのままの体勢で固まってしまった。
「おっじゃまっしま・・・・」
ドアを開けた先の光景に訪問者も固まってしまう。
「えーと、これは、何のプレイなんでしょうか?」
セリーナがすばやく立ち上がり、足早に部屋の奥へ立ち去る。ガフェインも立ち上がって訪問者の顔へ視線を向けつつ言う。
「少し前まで今日の晩御飯の話をしてたんですが・・・・って、え?」
「久しぶりっ。ガフェイン、元気にしてた?」
「結局誰なの?って、セメレさんじゃないですか!お久しぶりです。今お茶入れますね」
「な、何で姉さんがここに!?」
「可愛い弟を激励しにはるばるやってきたんだよ。セリーナちゃんもお久しぶり!あ、出来ればコーヒーお願いね」
「その為にわざわざここまで?まさかエヴェル姉さんも来てないだろうな?」
「エヴェルは体が弱いからお留守番。伝言だけ預かってきた。『困難な仕事になるかもしれないけど、どうか自分の身を大切に。無事に帰ってきてまたお姉ちゃんをその腕の中に抱いてね。あなたのエヴェルより。チュッ(はぁと)』だって」
「嘘つけえええ!明らかに創作だろそれ!」
「むむむ、私の完璧な創作を見破るとは。エスパーとして覚醒したか」
「なにがむむむだ!本人を知ってれば誰でも見抜けるわ。どうせ口数の少ないエヴェル姉さんの事だから『頑張れ』くらいしか言ってないんだろ」
「いんや、『自分の身を大切に』までは直接聞いたけど。あのエヴェルにそこまで長い文章を言わせるんだから結構気にかけてる筈だよ」
「そ、そうか・・・・」
「私はその心の声を後ろにくっつけただけ〜」
「いやいやねーよ、恋人同士じゃあるまいし。で、兄さんたちからは何か無いのか?」
「お父さんとお母さんとシグルズ兄さんは仕事で遠出してたから伝言は聞いてない。というか、実はここに来たのは旅のついでだし」
「姉さんが旅好きなのは知ってるけどついでだったのかよ」
ちなみにガフェインはブルフィンチ家の二男二女の末っ子次男だったりする。
「電話では色々聞いてたけど弟がどんな環境で飛んでるのか自分の目で見て回りたかったし、正直、次の旅先を決めあぐねてたから旅行ついでに見に行ってやろうってね」
「はあ・・・・、付き合ってらんねぇ・・・・」
豪放な姉はセリーナの淹れたコーヒーを飲み始める。ガフェインとセリーナもそれぞれ口をつけた。セメレがコーヒーを飲み干したところでセリーナがセメレに問いかける。
「ところで、この後はどうするんですか?」
「しばらく諸島を見て回るつもり。ああ、宿代もったいないから今日から何日間かはこの部屋で寝させて。いいよねガフェイン」
「何で俺が了承する前提で聞いてくんの・・・・。っていうか同様の理由で既に一人居座ってるんですが」
「え?セリーナちゃんと一緒に?同じベッドで寝てんの?ニャンニャンしちゃってるの?」
「同じベッドじゃねーよ!それにニャンニャンって、言い回しが古いわ!」
「一応、組み立て式の簡易ベッドも置いてあって、私はそれで寝てるんです」
セリーナはベッドの近くに折りたたんであるそれを指差す。
「なんだつまんない。ところで、ガフェインは次はいつ飛ぶの?」
「今はパーツ待ちだ。あと四日で船が来るから飛ぶのはその後だな」
「ふーん。じゃあとりあえずこの町を案内してよ。あとガフェインの飛行機も見てみたいな」
「ああ、こっちもいい暇つぶしになりそうだしいいぞ」
「こっちでできた友達も紹介しますね」
「ありがと。さて、一段落ついたらおなか減っちゃったな。晩御飯どうする?」
「とりあえず姉さんの紹介ついでに酒場に行くか?」
「そうだね、セメレさんとの再会祝いってことでパーッとさ」
「私も賛成ー!よっしゃ、派手に飲んで食っちゃうぞ!」
こうして三人は賑わう酒場へと向かう事にした。
「いやぁ〜、食ったぁ〜飲んだぁ!」
「セメレさんもやっぱりお酒強いんですね。あんなに飲んでも大丈夫なんて」
「だけど姉さんは俺みたいに酔わないわけじゃないんだから水飲んどかないと明日二日酔いになるぞ」
「うん、わかったぁ。でもみんな大した事ないなぁ、連続で飲み比べ挑んでもみんな先に潰れちゃうしぃ」
そう言うと冷蔵庫へ水を取りに行った。
「俺達姉弟が異常なんだろ・・・・。で、俺達三人に対してベッドはふたつ。もう簡易ベッドを置くスペースも無いが、誰が何処で寝る」
「ぐびぐび・・・・ぷはっ。じゃあ、私とセリーナちゃんがベッドで寝て、ガフェインは床ね。よし決まり、さー寝よ寝よ」
「よし決まりじゃねー!予想はしてた展開だけどこんなのあんまりだろ!」
「何?あんた、か弱い女の子を床で寝かそうとして心が痛まないわけ?」
「残念ながら大の男6人を飲み比べで潰すような姉さんを『か弱い』女の子とは呼びません。というわけだから姉さんが床で寝ろ。床がひんやりして寝易いぞ〜」
「あ、ほんとだー。って、アホか!」
「あの、私とセメレさんが一緒のベッドで寝て、ガフェインがもう一つのベッドで寝ればいいんじゃないですか?」
「いいのか?それじゃお前の寝る場所が狭くなるだろ」
「大丈夫、床で寝るよりはいいし女の子同士だし」
「私もそれにさんせー。もう疲れちゃった。何でもいいから早く寝たい・・・・」
そう言うとセメレはちゃんとした作りの方のベッドへさっさと倒れこんだ。
「簡易ベッドだと二人寝られるかどうかわかんないからガフェインがそっちで寝ることになるけどいい?」
「俺は別に構わないぞ」
「どーせ、『ハァハァ・・・・セリーナちゃんが昨日まで寝てたベッドだぁ。枕もシーツも余すところ無くクンカクンカしちゃうぞぉー!』なんて考えて・・・・ぐー」
「明日二日酔いになって苦しんでしまえこの馬鹿姉!」
第17話へ続く
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