第8話「地下大空洞」


ゲーム内ステージ説明
湖と海を結んでいると噂される
A島をつらぬく巨大な地下空洞。
最近になり、空洞の入り口が発見されたが、
その内部を攻略できた者は未だいない。
噂では、内部の岩盤をくり抜いて建造された
遺跡が眠っているとされるのだが・・・・


ガフェインはセリーナから愛機の改修した部分について説明を受けていた。プロペラは2重型、エンジンは出力の高いもの、キャノピーはより空気抵抗を少なくしたものが取り付けられ、主翼も旋回性重視のものが、尾翼は主翼とは逆に速度性能重視、ボディは軽量型のものと、個々のパーツの性能を考慮して全体的な性能アップを図ったらしい。
言い方を変えればほぼ全とっかえのようなものである。さらに隠し玉としてブースト、つまり急加速装置が取り付けられたとのこと。これは急な加速が必要な時、機体に取り付けられたブースターを一本消費して急加速を行うというものである。ブースターは全部で5本。
ただしこれは機体にもパイロットにも相当の負荷が掛かる為、緊急時以外には使わないようにセリーナから念を押されている。もちろん今回飛ぶ洞窟内で使用する気などさらさら無い。
また、今回は暗い洞窟内を飛行するので、進行方向を照らすライトが不可欠となる。一応広範囲を照らす事のできるライトを装備した。しかし、ライトで照らせる範囲には限りがある為、ちょっとした不注意が命に関わる。最悪、鍾乳石に衝突してむなしい最期を遂げる事になるだろう。
この飛行の後は燃料の補給ののち、直接B島に乗り込むつもりだ。セリーナのバックアップを受けられなくなるのは正直心細いが、安全なA島に居させる方がよいだろうと考えた。当人は納得いかないような顔をしていたが放置してもいいだろう。
しかし今回飛ぶ洞窟というのは、噂が広まっている割には遺跡を発見できたという話はまるっきり聞かない。それは遺跡まで辿り着けなかったのか、それとも発見できたが帰ってこれなかったかのどちらかだろう。しかし遺跡に地図があると踏んでいるガフェインにとって前者はまだしも後者はなるべくなら避けて欲しい事例である。
もし遺跡を発見して地図を入手したまま墜落してしまったとしたら、地図は燃えて灰になるか、トイレットペーパーのようにどこかへ流されてしまうだろう。それだけはなんとしても避けなければいけない。セリーナもその辺の事情を知って、早く逝け・・・・・もとい早く行けと急かしてくる。もちろん機体も直ったのでこんなところでもたもたしているつもりは無い。簡単な飛行プランを練って機体へと向かった。
ガフェインが機体へ乗り込もうとするとセリーナに呼び止められた。何事かと思い返事を返す。

「何か用か?」
「いや・・・・・あの・・・・・・」

妙に口ごもるセリーナ。ガフェインは何のことかわからないと言う様な表情をしている。

「どうした?」
「・・・えっと・・・・・・・ちゃんと・・・・生きて・・・・・帰ってきなさいよ・・・」

なんだこんなことを言うためにわざわざ来たのか。

「誰に言ってんだ。俺は絶対に帰ってくる。それまでちゃんと留守番してろよ。一人だからって寂しくて泣くんじゃねぇぞ。」
「私は子供か!余計なお世話だ!」

そんな会話も切り上げて、機体へと乗り込む。この飛行は改造によってもはや別物同然になった愛機のテスト飛行も兼ねている。洞窟に入る前に充分に挙動に慣れておかないとな。
滑走路に出てスロットルを上げ、機体をどんどん加速させていく。やはり加速度が改造前の比ではない。ぐんぐん速度を上げて行き、あっという間に離陸した。あとは洞窟に入る前にしっかり挙動のクセを掴んでおけばいい。最高速・機動力・安定性が改造によって大幅に向上している。心配なのは耐久性か、接触しない事を前提とした改造だな。
機体の挙動に慣れてきた時、やっと洞窟の入り口が見えてきた。木々に隠れていて見難い場所に洞窟の入り口は存在した。今のままではスピードが上がりすぎなのでスロットルを下げて速度を抑える。

「やっぱり中は真っ暗か、ライトを付けてきて正解だったな。」

そう言うと機体に装備してきたライトを点灯する。自機の周りは明るくなったが進行方向の奥がまだ暗い。ガフェインの機体は鍾乳石を避けつつ奥に向かって行く。入り組んだ岩が細く短い洞窟を形成しているようだ。
こんな逃げ道の無い場所での落盤は勘弁して欲しい。だが、ところどころで落石が発生するが、小規模なものでガフェインはそれを楽々と避けていく。まあ、これでも大規模な崩落が無いだけマシだが。


神経を研ぎ澄ました状態をもうどれだけの時間続けているだろうか。体感的な時間ではもう何時間も過ぎている。本当にこの洞窟の奥に遺跡はあるのか、そこに本当に地図はあるのかと疑念が湧き始めたとき、ライトの光の届かない洞窟の奥が急に明るくなる。
その明るい場所へ出ると、そこには広い空間があり、円状に岩盤をくりぬいて作られた遺跡があった。

ガフェインは急いでギアを降ろし、石畳が広がる場所へ着陸する。キャノピーを開け、機体から出て周りを見渡すと、改めてその巨大さ、精巧さに息を呑む。こんなものを大昔に造れるなんて・・・・。
内部は大型のスタジアムほどの円形の空間に、機体を駐機させている石畳の島と、岩盤をくりぬいて造られた遺跡があり、天井には木々で覆われているが地上へと繋がっている穴が存在し、そこから太陽の光が差し込んでいるため、洞窟の中間地点辺りにも関わらずこのように明るかったのだった。

外周の遺跡への入り口を見つけたガフェインは薄暗い通路の中を進んでいた。
遺跡の内部は荘厳な造りとなっており、居住というよりも何か宗教的な目的で造られたようなものだった。その証拠に生活の痕跡がほとんど無い。

「まったく、ゾンビやモンスターでも出てきそうな雰囲気だな。」

そう言いながら奥へ進むと、ある部屋で小箱を見つけた。岩を削って作られるこの遺跡の物品の中でこの小箱だけが木製であり、そのためにすぐに目に留まったのだった。
小箱を手に取り開けてみると、そこにはちぎれた紙切れ・・・いや、失われた地図の断片が入っていた。やはり地図は存在したのだ。昔話の通りに。

遺跡内を粗方探し終え、機体に戻ってきたガフェインは、洞窟を出るべく機体を離陸させた。
そして立ちはだかる鍾乳石や降り注ぐ落石をすり抜け、出口に向かって飛んでいく。

10分程飛行していると、前方に外の光が見えてきた。
洞窟を出ると、機体に新しく取り付けられていたレーダーを頼りに飛行場へと向かう。滑走路が見えてくるとガフェインはやっとほっとすることが出来た。
着陸させた機体を駐機場まで持って行き、機体から這い出るようにして出る。今日だけで一生分の集中力を使い果たした気分がしたので今日はもう寝よう。そう考えた矢先、聞きなれた声に名前を呼ばれる。

「ガフェイーン、お帰りー。あ!地図ちゃんと見つけてきたんだ!さっすが〜☆」

駆け寄って来たセリーナに小箱をひったくられ、宿の部屋へ連れて行かれる。もうそれに反応する余力さえ尽きていたのだろう。強く長い緊張の反動で部屋の前で気を失って眠りこけてしまったのだった。


第9話に続く


一つ前にどもる