第3話「横断列車」
ゲーム内ステージ説明
開拓が推し進められているA島を
横断する長距離鉄道。
主に輸送目的としての使われ方が多いが、
走行中の列車を給油機地の手段として使用する
という特例なども報告されている。
ガフェインは息を切らして飛行場に辿り着いた。
襲撃者たちが来る前に飛行場に着くことができたが、そんなにゆっくりしてはいられない。
ここで機体をバラバラに壊されでもしたらそれこそこの冒険はそこで終了してしまう。
ガフェインは格納庫の扉を開くと愛機のコックピットへ滑り込むように入った。燃料はまだそんなに飛んでいなかったから充分にある。
さっきから発砲音が聞こえている。ちくしょう、間に合えよ。
「管制塔へ、こちらガフェイン。離陸する。」
《了解、念のため列車の無線周波数を教えておく。136メガヘルツだ。それでは幸運を。》
「了解、感謝する。こっちもそっちの無事を祈っているよ。」
機体が格納庫から出ると爆発音まで聞こえてきた。ここは戦場か。
機体を滑走路の真ん中まで出すとすぐエンジンの出力を最大にし、一気に速度を上げていく。
襲撃者たちもそれに気づいたようで、こちらに対して銃弾を浴びせていく。時折、機体のどこかに銃弾が当たる音がする。
上がれ、上がれ、上がっちまえばこっちの勝ちだ。
機体が充分な速度に達し、操縦桿を引き上げていく。機体が浮き上がり、高度を上がって行く。よし、助かった。
そう思った瞬間。襲撃者たちの放った銃弾数発が胴体部分に命中し、燃料タンクに穴を穿つ。それに気づくのにそれほど時間は掛からなかった。
ふと燃料タンクに目を落としたガフェインは、普段では有り得ない速度で燃料が減っている事に気づいたのだ。
「やべぇ、滑走路は戦闘中だし、一番近くの飛行場は今朝俺が飛び立った後襲撃されてるし。とすると・・・・・・・・。」
ガフェインは下を走る列車を見る。彼の脳裏に最も選びたくない最善の選択が浮かぶ。列車の上からの給油という選択。
「やるしかないのか・・・・・・・・。」
無線の周波数を言われた通り136メガヘルツに変える。
「あー、あー、こちらブルフィンチ、応答してくれ。頼む、応えてくれ!」
《こちら列車、何事だ。乗車は駅から頼む。》
「いまは冗談に付き合ってる場合じゃないんだ!いいか、当機は銃撃を受け燃料が流出中、
そちらの給油設備を使わないと次の飛行場までもたない。給油はできるか?」
《それは・・・・・・・・まあできるが、こんな事成功したやつなんて一人も居ないぞ。》
「じゃあ俺がその最初の一人になってやる。早く準備してくれ。」
《わ・・・・・わかった。待ってろ。》
列車の車両の上部に給油装備らしきものが組みあがっていく。燃料が切れる前に出来てくれるといいんだが。
《準備完了だ。給油方法はまず機体の速度を列車と合わせて、次にその状態で列車の上に張られたロープに機体を触れさせてくれ。
後は自動で燃料タンクと給油ホースが連結されるから、列車からあまり離れないように飛んでくれればいい。
ちなみに連結解除はこちらがやる。そちらの都合で解除しなければならないときは言ってくれ。》
「了解した。」
言われたとおり機体の速度を列車と合わせる。そうして列車に少しずつ近づいていく。燃料も残り少ない、だが急激に接近して列車に激突するのはご免だ。
「間に合えよ。」
あと5メートル・・・・・・・・・4メートル・・・・・・・・・3メートル・・・・・・・・・くそッ、砂嵐でよく見えない。だが贅沢言っている場合じゃないな、
このまま接近するしかない。燃料が底をつきかけている。もう少し。
機体と列車の距離が徐々に近づいていく。そして給油装置に・・・・・・・・・・・連結!
機体が少し揺れる。そして機体は列車から少しずつ離れて行き列車から機体へ連結されたホースが見えてきた。やった!助かった。
《連結成功。給油を開始する。》
ホースから燃料が流れてくる。それと共にほとんど0に近かった燃料計の目盛りも次第に戻っていく。
これで大丈夫だ。このまま次の飛行場まで飛んでいけばいい。
成功した様子を見て、列車の運転手が言う。
《あんたすごいよ。ほとんどネタに近い設備でこんなことやってのけるなんて。一体どんなマジックを使ったっていうんだ!》
「言っただろ、最初の一人になってやるって。まあ他に方法も無かったし。とにかく助かった。ありがとよ。」
《いやあ、十数年列車動かしてきたがこんなスゲェもの見せてもらったのは初めてだぜ。後で同僚に自慢してやらなきゃな。》
その後はお互いで笑いあった。それにしても今回は昨日よりやばかった気がする。それに限界まで機体に無理させたようだ。
もうすぐ着く町では燃料タンク以外にも色々と修理しなきゃいけない所もあるだろうな。
2つ目のトンネルを抜けた辺りで不意に列車が警笛を鳴らす。もう町が近いという事か。この列車ともお別れだ。
「ほんと助かった。ありがとう。俺はガフェイン、ガフェイン・ブルフィンチっていう名前だ。あんたは?」
《名乗るほどのものでもねぇよ、若造。ヴィルドバルに着くまで死ぬなよ。》
「なっ・・・・・、おっさんエスパーかよ。」
《こんなところを飛ぶ飛行機乗りなんてそれくらいの目的しかないだろうが。》
「さっきの町でも言われたな。そんなに他の用事って少ないのか?」
《ない!じゃあもうすぐ町だ。ホースを離す。》
ガチャ、という音と共にホースが列車に巻き取られていく。視線を上げると町が見えてきた。今度の町は港町らしい、遠くの方に灯台も見える。
飛行場には難なく着陸できた。だが流石に格納庫に機体を持っていくだけの燃料は無かったようで、格納庫の寸前で惜しくも止まってしまった。
「やれやれ、前途多難な冒険だな。まあ、これで予定どおりに来れたしいいか。」
ゆっくりと機体から出ると、潮風が頬を叩いた。その風は、ちょうどD島のある方から吹いていたのだった。
第4話に続く
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