第1話「ファーストフライト」


ゲーム内ステージ説明
この諸島を目指す開拓者や冒険家たちは、
皆好んでこの小島をスタート地点に選ぶ。
対岸にある、A島の入り口の谷間を越えられた者だけが、
これから待ち受ける冒険世界に挑戦する
資格を得られるということなのか、、、


ガフェインは子供の頃からの憧れが現実になったような仕事にとても喜んでいた。 そう、まだ見ぬ秘境の冒険という内容の仕事だったのだ。
なぜいきなりこんな事になっているかというと、先日のオーバーホール完了の電話の後にかかってきた電話で、同じ飛行機乗りであり、仕事の斡旋も行なっているローグから仕事の紹介を受けたからだ。 その仕事の内容は『とある諸島の島々であるA(アルカディ)島・B(ブラン)島・C(クーラン)島のどれかの島からD(デスタン)島に到達し伝説上の古代遺跡「ウィルドバル」存在の真偽を確かめる事』であった。
依頼主の話によれば、D島の上空は常に巨大な積乱雲に包まれており、さらにD島には活火山も存在するため衛星からの写真撮影は不可能らしい。 さらにD島の異常な気候が冒険者の行く手を阻み続け、空路・海路共にD島までたどり着けた者はほとんどいないらしい。そしてその生き残りも、D島の気候に阻まれ全員が消息不明である。 当然のごとく報酬は性能の良い戦闘機一機が買えるほど多い。
まともな神経をしていればこんな依頼など即断るだろうが、ガフェインは受けることにした。もちろん死の危険があることは承知の上である。 だが、この世界にはまだ未開の秘境が存在し、その秘境に隠された遺跡を見つけ出すチャンスを自分は得た。 これがガフェインの好奇心をどれほど刺激したかは想像に難くない。

「子供の頃から願い続けてた夢がいきなり現実になりやがった!ここで引き受けないは飛行冒険家に非ず!うぇぇぇぇぇぇい!!」

紹介の電話を受けた直後はこんなことを口走りながら、普段では有り得ないほどのハイテンションで準備をしていた。

そして出発当日。A島の東方向に位置する小島の飛行場に彼はいた。ガフェインは朝食としてトーストと紅茶を腹に押し込んで自分の機体に向かっていた。 本当は緑茶の方が好きなのだがここには無いのだから仕方あるまい。 自分の機体にたどり着くと手早くキャノピーを上げ操縦席に滑り込む。 エンジンを始動して離陸開始位置へ到達、スロットルを徐々に上げて行き、最大出力でどんどん速度を上げていく。 離陸可能速度に達し、操縦桿を徐々に引く。一瞬、浮き上がる感覚が伝わる。 そして、手馴れた手つきでギアを格納し・・・・・離陸成功。あとは海まで直進するだけだ。
出発前日にも確認したが、やはり機体の挙動が良い。爺さん絶対オーバーホール以外に何か手を加えたな。 おかげで今から上手くいきそうな気がしてきた。
そんなことを考えているうちに海が見えてくる。小雨が降ってきたがたいした問題にはならない。 ここら辺は突風とエアポケットに注意しないといけない。ガフェインは周りに注意を払いながら海上から突き出た岩の上を掠めるように飛ぶ。 こんなところはまだまだ序の口。おそらくこの先の渓谷地帯が今回の飛行の正念場といったところだろう。 青い海がどんどん過ぎ去っていく。雨のせいで視界がはっきりしないが、もうすぐ渓谷の入り口が見えてくるはずだ。
雨が若干薄らいできたように思えた瞬間、渓谷の入り口が見えてきた。ガフェインは突き出ている大岩に気をつけて渓谷の中へ進んでいく。 いつの間にか雨も止み上空は晴れ間が広がっていた。
渓谷の中は狭すぎるというほどではなく、ガフェイン程度の腕でも普通に通り抜けられそうだった。 何事も無ければよいが。

「このまま行けば、なんとか無事に抜けられそうだ。」

そう呟いた時、上方から物音がした。背中に氷嚢を入れられた様な緊張が走る。 慌てて上を見上げると、今真下を通り抜けている最中の岩から砂が落ちてくる。 しかし、それ以上は何も起きない様だ。ガフェインはほっとため息をつく。 よく考えてみれば、自分が通りかかってきたときにタイミング良く岩が落ちてくるなんてそうある話じゃない。そう考えて気持ちを落ち着かせようとしたその時。
ガガガガゴシャァァァァァン!!

「うそーん・・・・・・」

前方の岩が突然崩れたのだ。幸い機体には影響が無い位置だが。再び緊張が走る。 おいおい冗談だろ!まさかこの先は落石とか崖崩れとかないよな。
その期待を裏切るように目の前でまた崖崩れがおきる。このまま飛んでいたら落ちてきた岩が機体にぶつかる。 ガフェインは機体を旋回させ岩の落ちてこない場所を通る。なんとか潜り抜けたが今度は真横で落石。 このコースじゃ激突だ。

「くそ、こんなところでやられる俺かよッ!」

そう叫んだが、もはやどうにもならないだろう。だが、最後まで足掻かせてもらう。 ガフェインは岩にあたるまいと懸命に機体を振り回す。岩は翼をかすめ、轟音と共に真下へと転げ落ちていく。 なんとか岩に当たらずに済んだのもつかの間。直後に亀裂のように狭い溝が目に入る。 どうやら休む暇を与えないつもりらしい。翼を擦らないように注意しながら溝の中を進む。 溝を抜けると次は烈風の吹く谷間。風に流されそうになるが機体を操りそれを防ぐ。 吊り橋の上をギリギリで通り抜けると徐々に風が薄らいできた。地図によればもう渓谷の出口のあたりらしい。 岩に空いた穴を潜り抜けると、今まで左右の視界を制限していた崖が途切れる。 最初の関門である渓谷を突破した!
そのまま前方の飛行場に向かう。エアブレーキをかけ、エンジンスロットルを半分に下げる。ギアも降りた。 どうやら無事に降りられるみたいだ。高度30・・・・・・・・20・・・・・・・・・10・・・・・・・・・・接地! エンジンスロットルを0に戻し、エアブレーキをかけ続ける。
完全に機体が停止しても、ガフェインはしばらくコックピットから出る事が出来なかった。 今回の飛行はそれだけ衝撃だったという事だ。機体をエプロンまで牽引してもらい、今日は休む事にする。
その夜、ガフェインは飛行場に併設してある宿のベッドに寝転がりながら今日のことを思い出していた。

「明日もこんな感じで飛ばなきゃならないのかな、あ〜自信がなくなってきたよまったく。」

冗談交じりでそう呟いたが、楽観的な考えもあった。ここを過ぎれば後は大したことは無いだろうと。 ここはかなりの難所だったのだろうと。そう考えていた。
しかしその時彼は知る由も無かっただろう。この最初の冒険はあくまでも序曲に過ぎなかったということを。


第2話に続く


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